眺めのいい部屋

gooから来ました(^^) 人は古い、映画や本は少しだけ新しい、記憶の小箱の中身です

2024年 映画館で観た日本映画 そして…


『高野豆腐店の春』(監督・脚本:三原光尋 2023)

全力疾走する82歳?を見たのは初めてかも。(『大いなる不在』いつかきっと観るぞ~などなど)

https://muma-muma.hatenablog.com/entry/cf9089f2341654034dd8e6ec72fddbb5



『月』(監督・脚本:石井裕也 原作:辺見庸 2023)

自分は余程腹が立ったんだろな~と思わせる感想が、日記ブログに残っていた。いちいち具体的な指摘をする気になれないほど「あまりにリアルじゃない」のに呆れ、この作り手は「人間について本気で考えてきたとは思えない」と感じた…のかな。(原作もこうなんだろうか…と疑いつつ、読む気になれないまま忘れちゃった自分もヒドイけど(^^;)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58096770.html


『夜明けのすべて』(監督・共同脚本:三宅唱 原作:瀬尾まいこ

この映画で私が気に入ったのは、「ごく普通の」人間関係(友達や恋人といった特別な間柄じゃない、職場の同僚程度)でも、自身が体調の困難などを抱えたままでも、人は「誰かのために何かができる」かもしれないのだということを、臆せず?描いてみせてくれたこと。
パニック障害に悩む男性は、PMSのせいで周囲と摩擦が起きかける女性の親切さを「お節介」とはっきり言うくらいで、2人は最後まで特に親しくはなってないように見えた。でも、そこが良かったと。
それとは別に(わたしなどが言うのはおこがましいけれど)「PMS月経前症候群)」や「パニック障害」の症状・現実について、社会の認知が進む一助になったらいいな… なんて思った記憶も。

『花腐し』(「はなくたし」とよむ)(監督・脚本:荒井晴彦 原作:松浦寿輝 2023)

あまりに何も知らずに観にいったので、映画の間中呆気に取られてたかも(^^;(こういう映画では、女優さんも男優さんも大変だなあ…とか、女性より男性の身体の方が美しく見えるように撮られてるのは意外~とか)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58295017.html

『ほかげ』(監督・脚本・撮影・編集:塚本晋也 2023)

画面が暗い作品なので、スクリーンで観られてよかったと思った。(塚本監督の映画は、作り手の本気度をヒシヒシと感じるので余計に)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58295017.html(ダラダラ感想を2回も載せてゴメンナサイ)

「ゲキ×シネ 『天號星』」(演出:いのうえひでのり 作:中島かずき 2024)

「舞台」を直接観にいくのは(種類を問わず)わたしには(体調的に)まず無理なので、オペラや戯曲をスクリーンで観られる機会があると嬉しい。この『天號星』も楽しんで観た。(俳優さんたちにとっては、やりがいのある機会なんだろうな…なんて(勝手に)思った)

名探偵コナン  100万ドルの五稜星(みちしるべ)』(原作:青山剛昌 監督:永岡智佳 2024)

たまたまこの映画を観るハメ(あはは)になったおかげで、「コナン」の世界を垣間見るきっかけになった。
アニメ(マンガ?)もドラマも、「いくらでも後から話を膨らませることができる」だけの「時間」が与えられたら、キャラに感情移入も出来るし、物語を複雑にすることもできる。ある程度時間の限られている「映画」より恵まれてる点だな~と。(そのキャラの「ファン」になれるくらい「個人を描く」には、やっぱり時間が必要かも…って)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58332460.html


『悪は存在しない』(監督・脚本:濱口竜介 音楽:石橋英子 2023)

この監督の作品から受ける「作り物感」がいつも不思議だ。澄んだ水が自然に流れるような映像を見ているにもかかわらず、そこに「人間」が加わった途端、「作り物」という感じがしてくるという。
こんなこと思うのは自分だけかもしれないし、映画はそもそも作り物なわけで、自分が何に引っかかってるのかも説明できない(それくらい微妙なことでもある)
この映画は石橋氏の音楽ライブ用の映像として企画が始まったらしいけれど、映画を観た限りでは(あくまでわたしの感覚として)「音楽はない方がいい」と感じた。音楽が「過剰」なのか、映像がそれだけで十分完成していると思うからなのかは、自分でもヨクワカラナイ… などなど、普段の自分が考えもしないようなことを、あれこれ思い煩わせる?映画だったとは思う。
(「物語」については、あまり考えても仕方ないような気がしたのは、なぜだったのかなあ)

『レディ加賀』(監督・共同脚本:雑賀俊朗 2024)

故郷に近い温泉地が舞台で、懐かしくて観にいった。主演の小柴風花さんは初めて見たけど、面白い女優さん(いい意味)が現れたと思った。ダンスで温泉地を盛り上げる…という話で、中学・高校と(学校で)創作ダンスを作らされた頃(大昔~)のことを思い出したりして、いろいろ楽しんで観られた映画。


『風よ  あらしよ  劇場版』(原作:村山由佳 演出:柳川強 脚本:矢島弘一 映像提供:NHK

ドラマがあったらしいけれど、観てないので。でも、伊藤野枝という人は、こういう人なのかなあ…と思わせるものがあったと思う。
演じた吉高由里子のまっすぐな瞳と、懸命に訴える強い言葉を聞きながら、きれいに描き過ぎている(この時代、そもそもこんなに生活がキレイだったはずはない、ということも含めて)ことなど、問題にしたくなくなったのも本当。知識としては知っていたけれど、こんな人が本当にいたんだということが、今となると…重たい。

ウマ娘  プリティーダービー  新時代の扉』(監督:山本健 アニメ―ション制作:CygamesPictures 2024)

「別に勧めるわけじゃないけど、あの映像はアニメとしては珍しいと思う。物語については興味ないと思うけど。元々スマホ・ゲームだし」と若い友人が言ったのが気になって、月1回のカットの帰りに観たアニメーション。
走るのは少女たちでも、土台は競馬の話(わたしはほとんど無知)でどーなることかと思ったものの、一生懸命(あはは)観ているうちに、これはこれで面白いと思うようになったから、アニメーションってスゴイ(^^;

「艦コレ」の話を聞いたときにも、「茶道、華道、戦車道」でも思ったけれど、こういうゲームやアニメの需要は(潜在的に)あるんだろうな~と。
でも、わたしが見てもウマ娘たちは(絵柄は好きじゃなくても)キャラとして可愛い(性格その他も含めて)。少しでも競馬についての知識(常識程度)があったら、もっと楽しんで観られたのではないかと、帰宅してから背景知識(過去のクラシック三冠の勝利馬とか)を少~し仕入れて、友人と映画の感想を言い合ったのがナツカシイ作品。

『帰ってきたあぶない刑事』(監督:原廣利 2024)

同じく月1回のカット帰りに、時間が合ったので見た映画。ドラマをあまり観たことないし、思い入れはない(映画の物語も全然思い出せない)んだけれど、久々に浅野温子さんに会えたのが嬉しかった(^^)(この俳優さんの心意気が好きで、今もそれは変わってないな~って)

『九十歳。何がめでたい』(監督:前田哲 脚本:大島里美 原作:佐藤愛子 2024)

 草笛光子さんはきれいでお洒落な方だけれど、「愛子さん」も「いくつになっても美人のまま」な人だな~って、検索して写真を見ながら、改めて思った(って、映画と関係ないですね。でも愛子さんの本のタイトルが「いかにも愛子さん!」で、なんか嬉しくて(^^))

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58526769.html


『ラストマイル』(監督:塚原あゆ子 脚本:野木亜紀子 2024)

Amazonをモデルにしたと思しき流通センターを舞台に、ブラックフライデー絡みの爆発事件という物語が進行する。(その手の流通センターって想像を超えるので、なるほどこういうものかと。もしかしたらそれが一番、わたしにとっては印象的だったかもしれない)
TVドラマ「アンナチュラル」「MIU404」を観た後でよかった。この映画が同じ世界とわかるのも楽しいし、満島ひかり岡田将生、阿部サダオといったキャストの演技も観ていて凄いな~と思ったりした。
でも…なぜだろう、ドラマを観ている楽しさだったのよね、映画全体も。だから楽しかったんだし、それでいいんだけれど…ともあれ、満島さんはすごい俳優さんだと思った。


『劇場版  アナウンサーたちの戦争』(演出:一木正恵 脚本:倉光泰子 2023)

TVドラマの方も観たような気がするけれど、「ベイビー・わるきゅーれ3」が始まるまでの時間待ちに、この映画も観た…という。
「《声の力》で戦意高揚・国威発揚を図り、偽情報で敵を混乱させた日本放送協会とそのアナウンサーたちの活動を、事実を基に映像化」したNHKの努力・自戒の念を感じた。
それにしても「さまざまなプロパガンダを担当した」人たちも、違う形で「戦争の被害を被った」人たちなのだと思うと、わたしのような者にも何人もの人が言ってくれた「戦争は絶対にしちゃいけない!」という言葉が蘇る気がした。(なのに世界中のあちこちで、戦争は続行されている)

『ベイビー・わるきゅーれ  ナイスデイズ』(監督・脚本:阪元裕吾 アクション監督:園村健介 2024)

この映画観にいく前に、この際だからと、見てなかった1&2も家で観たのが良かったかも。(1のショック(いい意味)が大きくて、それが3まで続いた感じ) とにかく面白かった! アクションも凄かった!(^^)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58720779.html


『キングダム4  大将軍の帰還』(監督:佐藤信介 原作:原泰久 2024)

とにかく「大将軍」がカッコ良かった!(大沢たかおさんのイメージが変わった) ギョウカイを演じた女優さんの名前が清野菜名さんとわかって嬉しかった……などなど。

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58726245.html


『侍タイムスリッパ―』(監督・脚本・撮影・編集:安田淳一 2024)

面白かった!!

以前『サマーフィルムにのって』のエンディングで、高校生の自主制作時代劇の完成作品に驚いたことがある。時代劇って、製作中のドタバタの中ではあまりに「ニセモノ」なのに、完成作品を映写したら「まさに時代劇!」になるんだと。その落差の大きさに、ほとんど驚愕!した。
この映画は、そういう「自主制作?」の雰囲気がどこかにある(そういう風に作られている)のに、オトナの「プロの面白さ」で、やっぱり時代劇っていいな~と思わせられる。
主人公の素朴さ、正直さ。一方、敵役の武士の「役者としての」華やかさと魅力。こんな役者さんたちが、ちゃんといたんだということにも、今頃驚いたりして(^^;
こういう映画がもっと出てくるといいなあ。エンタメってこういうことなんだけどな~って思ったのを思い出す。(いっぱい賞が取れて良かった!)


『海の沈黙』(監督:若松節朗 原作・脚本:倉本聰 2024)

全編「昭和そのもの」なことに、一番驚いたんだと思う。(「昭和」な人じゃないと、この映画を見たら引くんじゃないかなあ) 同じテーマで描くとしても、もっと「今」を感じさせられないと、今の時点でこういう内容を描こうとする意図が、理解されない気がしたけど…余計な心配?)


(19本)



【2024年のベストを選ぶと…】


2024年に観た映画は50本。そんなに観たっけ…な感じですが。

観たい映画はなかなか(体調その他で)観にいけず、たまたま「時間が合った」映画をずいぶん観たと思うので、なあんとなく残念な気分が残ってるせいでしょう(仕方ないけど)

そんな中で、(あくまで私個人にとって)スクリーンで観られてよかった作品というと……

  
  『ダンサー  イン  Paris 』

  『VORTEX  ヴォルテックス』

  『シビル・ウォー   アメリカ最後の日』

  『高野豆腐店の春』

  『ほかげ』

  『ベイビー・わるきゅーれ  ナイスデイズ』
 
  『侍タイムスリッパ―』


中途半端な数字ですが、この7本で個人的ベスト7(順位なし)とします。
(明日選んだら、べつの映画になりそう)

外国映画より日本映画が多いのは、わたしとしては珍しいかも。
(外国映画を観られる機会が減ったからかなあ)


昭和の映画館(と呼んでいるあたご劇場)で観た作品が半分以上(かな?)
今は休館中ですが、再開されるのが待ち遠しいです。

 

とりあえず宿題が終わって嬉しい~(^^)


おつきあいくださった皆さま、ありがとうございました!

 

 

 

2024年 映画館で観た外国映画


オッペンハイマー』(監督・脚色・共同製作:クリストファー・ノーラン 2023 アメリカ)

家族全員が観た映画… というだけでも、その注目され方がわかるけれど(監督がこの人だから?)、わたしはこの映画のことがあまりよくわかってないのだと思う。何種類かの時間軸が交錯して、ただでさえよく知らない人のことを理解するのをムズカシクしている。
マンハッタン計画って、こういうものだったの?とか、オッペンハイマーってこういう人生だったの?とか、思ってみてもムナシイというか。
何のためにこの映画を監督が作ったのか,ちょっと訊いてみたい…と思ったのを思い出す。

『枯れ葉』(監督・脚本:アキ・カウリスマキ 2023 フィンランド=ドイツ)

気の抜けたサイダーに、さらに水を足したような感想が残ってたので下に。(次の『理想郷』と一緒くたにされてます(^^;) カウリスマキ監督も今は幸せなのかな~というような、ちょっと微笑ましいものを見ているような気分でいたのを思い出す。

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58293050.html


『理想郷』(監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン 2022 スペイン=フランス)

「教養ある都会人」って、ほんとにこんなに「田舎」に暮らす人々の気持ちに鈍感なの?(自分が田舎人なもんで理解できないのかなあ)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58293050.html


『ファースト・カウ』(監督・共同脚本:ケリー・ライカート 2020 アメリカ)

私の記憶には定着しない種類の映画だったのかなあ。観ている間は、それなりに面白かったんだけど。(今はアタマの中に断片が数枚散らばってるだけ?)

『VORTEX  ヴォルテックス』(監督・脚本:ギャスパー・ノエ 2021 フランス)

意表を突かれるような作品だけれど、わたしはむしろ「端正な映画」と感じた。その眼差しの温かさ?みたいなものも含めて。

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58332507.html


『パスト  ライブス  / 再会』(監督・脚本:セリーヌ・ソン 2023 アメリカ=韓国)

この映画は「観たことにならない」のが残念。会場(の空気環境)がCS気味の自分に合わなくて… というグダグダを、長々書いた日記が残っていた。(映画と、作った方たちの両方に申し訳ないし、観られなかったのはやっぱり悔しかった…)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58399840.html


瞳をとじて』(監督・原案・共同脚本:ビクトル・エリセ 2023 スペイン)

不思議な風合い(わたしにとって)の作品を作る監督さんだなあ…と。(それは『ミツバチのささやき』(1973)  の頃と変わらなかったので、ちょっと驚いた)

https://muma-muma.hatenablog.com/entry/09063a4b3066f2ccd604e77825bc1e1c

インサイド・ヘッド2』(監督:ケルシー・マン 2024 ディズニー&ピクサー

前作の「1」は、(自分の好みとは少し違っていても)物語として面白いと思った記憶がある。けれど、この「2」はピンとこなかった。「思春期」をこういう形(枠内)で描くのは、無理があるのかなあ…なんて思った。


『シビル・ウォー   アメリカ最後の日』(監督・脚本:アレックス・ガーランド 2024 アメリカ)

予備知識なしで観にいって、強烈な映画体験(としか言いようがない)が残った作品。ここまで来ると、爆発・射撃・騒音・暴力…などなど、大したことじゃないと、観ながら思うようになった自分にも呆れたけれど、内容のソラ恐ろしさに比べれば、モノの数じゃないと本当に思ったのだ。

観にいった頃には、世の中はまだ、「アメリカで内戦?  いくらなんでもォ」だったと思う。なのに、その後どんどん「先のことはわからない~」な雰囲気になってきているのを、一日本人(無知)の自分でさえ感じる。

ショッキングなシーンも多々あったけれど、いい意味で印象的なシーンもいくつもあった。(プレスを邪魔者扱いせず、危険に際しては明らかに庇っている兵士たちとか、お互い察して理解するジャーナリストたちとか…)
近未来のファンタジ―?として、全くのフィクションである「映画」という形で観られる間は、まだいいんだけど… なんて思いながら、でもソンナコト抜きに、所謂エンタメ作品としても、よく出来た映画だったのかもしれないとも。(自分はこういう映画では、それがわからなくなる)


ヒットマン』(監督・共同脚本:リチャード・リンクレイター 共同脚本・主演:グレン・パウエル 2023 アメリカ)

ラストにイチャモンつけてる感想が残ってるけど、思い入れなしに観たら、これはこれで普通に面白かったのかなあ。

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58839984.html


『モアナと伝説の海 2』(監督:デイブ・デリック・Jr. 制作:ディズニー・アニメーション・スタジオ 2024 アメリカ)

このシリーズは3部作と、後から若い友人に聞いた。今回はその真ん中ということで、「だから大きな盛り上がりには欠けてる」のだそうな。
ディズニーのミュージカル・アニメーションは、当地では吹替でしか見られないことが多く、『アナと雪の女王』のときに(個人的に)「歌に懲りた」せいで観にいくつもりがなかったけれど、諸々の事情で観るハメになっちゃった作品(^^; 
でも、海(水)の表現は相変わらず迫力があり、しかも美しい。劇場版のアニメーションがスクリーンで観られるなら、それ以上はあんまり文句言えないな~と、いつもながら思った(『ロボット・ドリームス』は、上映会場が私の体調にヒビク場所で、観にいけなくてとても残念だったので)



 

(11本)

2024年 オフシアターで観た映画 (2)

今回(2024)のオフシアター映画は、わたしには感想が書きにくい(ほんとは書けない?)作品が多かったんだと思いました。

なんだか勝手な文句ばっかり言ってるようで、書いていても気分良くなかった。もっとさらっと「ひとこと」だけのメモにすれば良かった… などと、書き終わってからぼやいてます。

(でも考え始めると、書き始めると、ウソ(きれいごと)書いてもしょうがない…と思ってしまう自分。面倒だな~と思われたら、どうぞ読まずにスルーなさって下さい)


『燃えあがる女性記者たち』(監督:リントゥー・トーマス スシュミト・ゴーシュ 2021 インド)

「不可触民」と呼ばれる、それも「女性」たちが、新聞社「カバル・ラハリヤ(ニュースの波)」を作り、そこで活動(仕事)しているということが、わたしにとっては本当に驚きだった。そういう苦しい環境にいても(というかそういう環境だからこそ)動き出せる女性たちが現実にいるのだということが、ほとんど目からウロコだった自分が恥ずかしい。
現実はこの映画より、ずっと厳しいものなのだろうと思うけれど。(このドキュメンタリーの撮影スタッフたちも大変だったはず。命が危ういというレベルで)


『蟻の王』(監督・脚本:ジャンニ・アメリオ 2022 イタリア)

なぜかわからないけれど、この映画の主人公である芸術家の男性像が、よほど自分は苦手だったのだろう。(インテリの身勝手みたいに見えちゃう?雰囲気のせいかなあ。物語は既にオボロ~なのに)
彼を崇拝し影響を受けた若い画家については、「同性愛の治療」の目的で所謂「電気ショック」を何度も受けている場面など、本当に痛ましかった。「一体いつの時代の話?」と思うけれど、1960年代のイタリアの実話に基づいているとのこと。そんな頃でもまだそういうことが、それも「治療」として行われていたということに、わたしなどは本気で腹が立つ。(「治療すべきもの」とされていること自体間違っているのだけれど、50年代の「イミテーション・ゲーム」の主人公(イギリス)も、ムチャクチャな「薬物治療」を受けていた) 若い画家の初々しさと一途さ。演じたレオナルド・マルテーゼの横顔が、今も記憶に残っているので余計に。

ブルーバック あの海を見ていた』(監督・脚本:ロバート・コノリー 原作・脚本協力:ティム・ウィントン「ブルーバック」 2022 オーストラリア)

この映画の主役は西オーストラリアの美しい海と、大きいものは体調1.5mにもなるという魚グルーパー(主人公の少女がブルーバックと名付ける)じゃないかと。魚は「作り物なのかな~ でも、ほんとに生きてるみたい」な仕上がりで、それもすごい! 
映画を観ている間、自分も素潜りで海中を歩いたり、踊ったり?しているような気がしたくらい、海が自然な美しさで、なんだか物語のことはアタマに入らなかった気がする(^^)
ミア・ワシコウスカを初めていいなと思った。この人は所謂ヒロイン風?の役より、こっちの方が自然で、しかも美しく見える気がして)


『探偵マーロウ』(監督:ニール・ジョーダン 2022 アメリカ=アイルランド=フランス)

原作は「黒い瞳のブロンド」。「ロング・グッドバイ」の続編として本家より公認とか。わたしとしては、そちらを読んでみたいと思った。(きっと面白いのだと思う。映画の方は、なぜこれを作ったのかわからなかったけど…って、ゴメンね(^^;)


『あしたの少女』(監督:チョン・ジュリ 2022 韓国)

英語題は”Next Sohee"(次のソヒ) こういう労働環境で頑張らざるを得ない「ソヒ」(主人公の少女の名)は、たくさんいるのだという意味かな…と。
現場実習生としてコールセンターで働き始めた高校生が、3か月後には最悪の決断をする。でもそれは「若い人にはよくあること」のように扱われ、もみ消されようとする…
タイトルも、刑事の役で出演するペ・ドゥナも、同じ作り手の『私の少女」を意識してのことかもしれないけれど、若い人の苦しさを「本気で取り上げてなんとかする」ことができないのは、今回も変わらないのか…なんて、ちょっと思ってしまった。状況は日本も同じようなものだと思うから、余計に辛く感じたんだと思う。(ぺ・ドゥナのパンチにはビックリした。最後のソヒのダンス映像、その弾けるような笑顔は嬉しい驚きだったけれど… なんとも言えない気持ちが残った映画)

『アダマン号に乗って』(監督・撮影:二コラ・フィリベール 2023 フランス=日本)

精神障碍者と呼ばれる人々を支援する活動について、よく知らない、あまり考えたことがない、という人にとっては、ちょっとわかりにくいドキュメンタリーかも。(といっても、自分もあまり知らないんだけど) 
「説明は最小限にして、とにかく活動の現状を見てもらう」という作り手の姿勢と、「映してよい(本人の許可が取れている)人・物」が限定されるとか、撮影に際して色々あるだろう現実的な制約が、この活動の全貌をわかりづらくしているように、わたしには見えたから。
それでも、こういう活動が(当然お金が掛けられて)なされているということ、それ自体はとても羨ましく感じられた。(わたしは自分がこういう活動の「利用者」側のように、今も感じるのだと思う。そういう時代も結構長かったので)


『ダンサー  イン  Paris 』(監督・共同脚本:セドリック・クラピッシュ 2022 フランス=ベルギー)

バレエを心から愛している人が作った映画だと思った。ヒロインがケガで苦しんでいても、雰囲気は明るく健康的で、「前向きに生きていこう」というメッセージを(それも穏やかに優しく)感じさせる映画。(観ると、きっとバレエが好きになります(^^))

https://muma-muma.hatenablog.com/entry/71b6a3707bc5fe3ef853cc6642985573

『親愛なる同志たちへ』(監督・脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー 2020 ロシア)

「冷戦下のソ連で30年間隠蔽された民衆弾圧事件を題材に…」という作品で、その内容というのは、共産主義国家ではあり得ないはずの「スト」鎮静化のために、当時のフルシチョフ政権側は「約5000人のデモ隊や市民を無差別に銃撃」し、その後の情報遮断を強硬な手段で実行した…というもの(らしい)

映画では、「熱心な共産党員として長らく国家に忠誠を誓ってきた」女性主人公が、祖国に裏切られ、しかも騒動の間に一人娘が行方不明になり、情報遮断の中を探し回る…という物語が描かれる。

こういう映画の感想は、わたしには書けないのだと思う。(観ている間は、少しでも笑える瞬間を探していただけ?という気がしてくるくらい)
「物事は規則や論理?に従っては進まないし、当然すべてに《裏》の事情がある」「人は欲得ずくか、たまに個人的な感情で動くだけ」などなど… そんなことを今更映画で見せられても… (って、歴史に興味が持てなくなってる?だけなのかもしれないけど)


ハワーズ・エンド』(監督:ジェームズ・アイボリー 原作:E.M.フォースター 1992 イギリス=日本)

昔この映画を観たときには、もっと素直に映像の美しさを楽しんでいたのかなあ。今回は、イギリスの田園風景は美しいけれど、人間社会は美しくないんだなあ…というような感慨が残った。(日本も戦前は階級社会だったと思うけれど、自分は「身分」が問題になる社会が、この年になってもやっぱり許容できないんだろうか。財力による格差の方がまだマシ…といった気分になってきて困った)

『ブルックリンでオペラを』(監督・脚本:レベッカ・ミラー 2023 アメリカ)

主演の男優さん(ピーター・ディンクレイジ)の落ち着いた風情、自分(と自分の人生?)についての自信の厚み?が魅力的だった。

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58696057.html


『ぼくは君たちを憎まないことにした』(監督・脚本:キリアン・リートホーフ 2022 ドイツ=フランス=ベルギー)

「2015年の、所謂《パリ同時多発テロ事件》で妻を失ったジャーナリストが、事件発生から2週間の出来事をつづった世界的ベストセラーを映画化」とのこと。生後17か月の息子と残された彼は何を思い、どう行動したか… 

個人的な感想だけれど… 怒りや悲しみという自分の気持ちを最優先する主人公を見ながら、こういう事件をニュースとして知るたびいつも感じた、「当事者じゃない自分には分からないことなんだな」ということを、再確認させられた映画だったと思う。

(映画を観ながら疑問に感じた細かいことがいくつもあったらしく、原作をたまたま見つけて読んだ後の短いメモが残っていたので、備忘用に貼っておきます。映画の感想にはなっていません(^^;)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58735887.html

『戦争と女の顔』(監督:カンテミール・バラ―ゴフ 原案:スベトラーナ・アレクシエービチ 2019 ロシア)

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」を原案に作られた映画とのこと。映画を観ている間、わたしはむしろその原案になった本の方を読む方が、穏やかな気持ちで「戦争に参加した女性たち」のことを知ることができるんじゃないかと、考えていたのを思い出す。(自分が以前に読んでとても勉強になった本なので)
軍事行動に参加した女性兵士の戦後の生活が、どれほど過酷なものだったか、主演の若い女性二人を見ているだけで、もう胸が痛くなる。わたしなどは、こういう痛みからは、「何かを学ぶ」ことなど出来ないのかもしれない。もちろん、映画は「知る」「学ぶ」ために観るものじゃあないのだけれど。


『本日公休』(監督・脚本:フー・ティエンユー 2023 台湾)

「台中の街角にある昔ながらの理髪店」というのが既にノスタルジーを感じさせる。店主の女性理髪師とさまざまなお客とのアレコレ、家族間の問題などを、ごくありふれたこと、いつまでも変わらない日常のように描きながら、その実、時は流れ、人は老い、時代は変わっていくのだと、穏やかに、時にユーモアも交えて語っている映画だと思った。(台湾の映画はなんとなく好き。ごく自然に、こういう雰囲気の中で暮らしたい…という気持ちにさせられる作品を何本も観た気がする。こういう懐かしさって、何なんだろう)

 

 

(1) 7本  (2) 13本   オフシアター  計20本

2024年 オフシアターで観た映画 (1)


昨年オフシアター(自主上映会)で観た映画は、高知県立美術館冬の定期上映会での原一男監督特集が最初でした。

原一男監督全作品上映」ということでしたが、若い友人の「全部観たい」に釣られて?わたしも結構たくさん観ることに。(別行動だったのになぜか引きずられる自分(^^;)
3日間で計21時間以上という、わたしにとっては「大時空旅行」になりました。


『ニッポン国 VS 泉南石綿村』(2017)

ずっと後になってからも、若い友人は、「(権力と対峙する場合は)要するに、あの泉南のときみたいな話になるんよ」と。それくらい、アスベストの被害とその国家賠償訴訟を的確に描いたドキュメンタリーだった。
石綿被害で死ぬということがどれほど凄惨なことか」「『お上に楯突く』のはどれほどの妨害に遭うことか」それでも「戦わない限り、展望も希望も全く見えないままになる」のだと。
(被害者やその家族が、少しずつ成長していく姿がまぶしかった。すごいなあ…と)


『れいわ一揆』)(2019)

2019参議院選での、れいわ新選組候補者たちの選挙活動の一端を見せてもらった。世の中にはいろんな人がいて、誰が立候補してもいいんだという、ごく当たり前のことを再確認したのかも。


『さようならCP』(1972)

映画が作られた2年後くらいに、大学祭で上映会をした記憶がある。絵の好きな友人はシルクスクリーンでポスターを、わたしは(なぜか)かまぼこ板の木版でチケットを印刷し、重度脳性まひの方の話(言葉)が聞き取れず、でも「字幕が無いのは当たり前」などと、友人たちと話した記憶も。
その後、青い芝の方たちと直接会って話を聞いたり、アパートに泊まってもらったりしたきっかけになった。個人的に特別な記憶のある映画だけれど、当時上映会では落ち着いて観られなかったらしく、今回「初めて見る」ような新鮮な気持ちになったのが、自分でも意外だった。


『極私的エロス・恋歌1971』(1974)

その後のトークで、監督が、「この映画の主人公の女性には、自分はとても世話になった。この人に出会わなければ、今の自分はないと思う。それまでの考え方を根本的に疑い、ゼロから作り直すきっかけをくれた人」といった意味のことを言われたのが、印象的だった。

帰宅後、若い友人は小声で、「正直言うと、僕はあの女性の言うことが全く理解できなかった。意味が全然分からなかったんだけど、勝手に推測して決めつけるのも良くないし… オカーサンはわかった?」「ワカラナカッタ(笑)。でも、ああいう喋り方になるのはわかる気もする。理路整然とわかりやすく話したら、そのまま社会の男性論理の中に組み込まれてしまいそうな気が、わたしでもするというか。この映画の当時は、今よりもっともっと『男性社会』だったわけだし…」 友人は、やっぱりそうか…といった表情で「僕もそんな風なこと考えてた」と。


原一男監督トーク  90分)



ゆきゆきて、神軍』(1987)

レンタルビデオ」の時代に、借りて観た記憶がある。とんでもないコトが戦争中にはあったんだな…という以前に、日本にもこういうトンデモナイ?人がいるんだ~という驚きの方が大きかった。
今回、再度ゆっくり観ても、感想を書きたいという程の感情が出てこないのは、わたしが「人(個人)を追い詰める」ことを生理的にイヤだと思う人種だからかもしれない。「追い詰められて当然(のことをしたはず)の人」だとしても、そういう場面をわざわざ見たくはないのかも。


全身小説家』(1994)

井上光晴という名前しか知らなかった人を、「実はこんな人だったんだよ」と眼に見える形にしてもらった気がした。
映画の序盤から、わたしはこの人が「常時パフォーマンスをしている」?人物だと感じた。いかにも素顔を見せているかのようで、それは「パフォーマンス」としての「素顔」なのだろうと。どれほど舌鋒鋭い批評家だとしても、どれほど楽しい「芸」を人前でユーモラスに?見せるとしても、この人が(甘えん坊で)人懐っこくて、周囲に人が(沢山)いないと寂しくて仕方ない…という人間だとしか思えない。もちろんそのこと自体は、悪いわけでは全然ないのだけれど。

観てから1年後の今、井上氏が作り上げた虚構(「ウソつきみっちゃん」)がどんなことだったのか、わたしは全く覚えていない(^^; それくらい、わたしにとっては興味のない内容だったのだろうか。そんなことより、井上氏の、生き生きキラキラした風貌・所作の中にちらつく「寂しさ」の影の方が、強く印象に残っている。(「全身小説家」だったんだなあ…と)


水俣曼荼羅』(2020)

   第一部 病像論を糾す
   第二部 時の堆積
   第三部 悶え神

2時間ずつ3本、計6時間を長いとは思わなかった。
「色々な人が出てくるから、面白いですよ(退屈なんてしませんよ)」という、映画好きの知人から聞いていたことは本当だった。

行政側の対応は本当に酷かったりする。それは最近でも同じようなことを、違った分野の訴訟についてニュースで聞いたりするわけで、こういう問題には「終りがない」のを感じる。(ある範囲を決めて、その中の人については辛うじて被害者と認定しても、少し離れたり、時代・世代が違ったりすると認定されないとか) そうせざるを得ない行政側の都合も想像できるけれど、苦しんでいる人を門前払いにして切り捨てるのが、正しいことだとは、わたしには思えない。

こういう問題について、もしも自分が当事者の立場になったら… もう(アキラメて?覚悟を決めて?とにかく腰を据えて)「戦うしかない」のだとつくづく思った。わたしのようなヘタレの、すぐエネルギーが切れてツブレる人間にとっては、全然有り難くない、ほとんど不可能な認識・教訓ではあったけれど、最後に残ったのはそういう感慨だった…という映画。



(「原一男監督特集」だけで長くなってしまったので、残りの映画については次の記事にします)

2023年 映画館で観た日本映画 そして…


『すずめの戸締まり』(監督・脚本:新海誠 2022)

前作『天気の子』の方が好き。(でも、あの「椅子」は愛嬌があって、ずっとこのままの姿の方がいいな~なんて思った)


『ケイコ  目を澄ませて』(監督・共同脚本:三宅 唱 原案:小笠原恵子「負けないで!」2022)   

実在するモデル(聴覚障碍がある女性プロボクサー)があると聞いて、これは観にいきたいと。不自然に見えるシーンはあっても、そんなことより、こういう風に「ただただ誤解を受け続ける」立場・人生の女性の、決意と努力に圧倒された映画だったと思う。


『せかいのおきく』(監督・脚本:阪本順治 2023)

モノクロとカラーが絶妙に切り替わるのに感心した(^^; おきくの聡明さは目に清々しいけれど、これは現実にはあり得ない、一風変わったファンタジーだと思いながら観ていた気がする。


銀河鉄道の父』(監督:成島出 原作:門井慶喜 2023)

宮沢賢治のことをほとんど知らなかったので、これほど宗教に打ち込んだ人なのか……と。最期の場面、父親(役所広司)が枕辺で読む「雨ニモマケズ」をスクリーンから目をそらして聞きながら、色々なことを想った。

https://muma-muma.hatenablog.com/entry/e40a8e0d0e08900b2861975506fd47cc


中島みゆき  劇場版  ライヴ・ヒストリー  2007ー2016   歌旅~縁会~一会』

一度くらい「みゆきさん」のライヴ映像をスクリーンで観てもいいかなあと。(その昔「時代」の歌詞に救われた経験があって、まあ信者のハシクレだったので(^^;)


『怪物』(監督:是枝裕和 脚本:坂元裕二 2023)

ごく普通の(やや鈍感そうな)担任の先生が、あの段階で少年二人の関係に気づいたのに驚かされた。人の資質・感性といったものは、普段自分でも気づかない所に埋もれていたりするモノなのかも…と。同様に、何が(この場合こどもにとって)幸いするかも、アタマではわからないことなんだろうな~とか。(あの校長先生のヤヤコシサも含めて)


君たちはどう生きるか』(原作・脚本・監督:宮崎駿 製作:スタジオジブリ 2023)

「ヨクワカラナイ」ばかり並べた感想が残ってました(^^; でもでも、イメージの奔流のようなアニメーションは、とてもオソロシかったり、美しかったり。(鳥というのはフンをまき散らすものだということを、当然のように画面に載せるハヤオおじさん。また次も作るかなあ)

https://muma-muma.hatenablog.com/entry/2fe455c4270d339ff1a3dae83ff085e8


『オレンジ・ランプ』(監督:三原光博尋 原作:山国秀幸 2023)

39歳で「若年性アルツハイマー認知症」になった男性(丹野智文さん)の実話が基になっている作品。(認知症の本人や家族、サポートする人たちの要望で、地元の映画館で上映された)
映画の前半では、発症したばかりの頃の本人や家族の戸惑いが、とてもリアルに描かれている。後半は、ちょっと教育映画?みたいになるけれど、それでも「若年性認知症」とはどういうものかを知るきっかけにはなると思う。
何より、「認知症は絶望するようなものじゃない」ということ。「若くして発症しても、普通に(仕事をして、家族と一緒に)暮らせる社会にしよう!」という気持ちが湧いてくる… そんな映画だし、丹野さんという方ご自身がそういう存在だといつも思う。


『アリスとテレスのまぼろし工場』(監督・脚本・原作:岡田磨里 アニメ制作:MAPPA 2023)

ひょんなことから岡田磨里(当時はアニメの脚本家)を応援する?気持ちになって、映画を作ると聞くとせっせと観にいく(^^;(この映画も2回観た) 大掛かりな事故で「すべての出口が閉ざされ、時まで止まってしまった街」で、「いつか元に戻れるように、何も変えてはいけないというルールが出来て…」という設定が、薄気味悪いというか妙に現実的というか。この作り手は「それでも若い人に期待している」人種なんだな…なんて、岡田磨里作品を観ると思う。わたしの好みとは違っていても、そこに共感するのかも。


『こんにちは、母さん』(監督・共同脚本:山田洋次 原作:永井愛 2023)

吉永小百合は、映画の中ではちょっと苦手な俳優さんだったけれど、この映画の「母さん」は好き。さすがに、お酒を飲んでクダを巻く人には見えないけれど、こういう(年齢の)役柄をもっと観てみたいと思った。努力して、少しでも(人間として)上を目指そう…という姿勢が眩しい人だった。


『駒田蒸留所へようこそ』(監督:吉原正行 アニメーション制作:P.A.WORKS 2023)

以前「お仕事シリーズ」なるTVアニメを少しだけ(『花咲くいろは』1話だけと『SHIROBAKO]』全部)観たことがある。「働くこと」がテーマのTVアニメというのが新鮮で、しかも面白かった!記憶があって、それらを作ってきたというP.A.WORKSの劇場アニメを、イソイソと観にいった。
素朴で地味な印象の絵。ウィスキー蒸留所(日本にも結構あったんだ)のさまざまな困難と経営難。それでも「幻のウィスキー」復活を目指す、若き女性経営者。なんというか……やっぱり珍しいアニメだったと思う。
でも、なぜか今も好印象の記憶が残るのは、「挑戦する人」を見ていたくなる気持ちと、わたしもお酒が好きだからなのかなあ…なんて(^^; チラシに「2023アヌシー国際アニメーション映画祭  コントルシャン部門正式出品作品」なんて書いてあったので、調べてみたら、『2019年より設立された、個性的な長編作品で、観客に課題を生み出してくれる挑戦的な作品が対象』なんだとか。なるほど、確かにそういう作品でした。

ゴジラ-1.0』(監督・脚本・VFX:山崎 貴 2023)

「アカデミー視覚効果賞」は(一観客として)嬉しかった!(^^)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/57973584.html

『ミステリと言う勿れ』(監督:松山博昭 原作:田村由美 脚本:相原友子 2023)

これも、時間が合って観た映画。菅田将暉クンは天然パーマとチェックのマフラーが似合ってて、カレーがものすごく美味しそうで、観ているのは楽しかった~(^^)
ミステリーについては全然覚えていない。でもその後、ドラマの方をまとめて観た記憶があるので、案外興味が湧いたのかも(^^;

『福田村事件』(監督:森達也 脚本:佐伯俊道 井上淳一  荒井晴彦 2023)

とにかく、ほとんど名前しか知らなかった「福田村事件」が、どういうものだったのか、ざっと見せてもらったと思う。現実はいつも、多くの要素がからんで、混沌としているものだと思うから、実際はもっと猥雑で、些細なことでどう転ぶかわからない「こういう種類」の事件が多発したんだろうな…と、暗澹とした気持ちになった。
なのに、「形を変えて、また起こるだろう」と思ってしまう自分がいる。次に起きるとき、殺すのと殺されるのがどういう人たちなのかはわからなくても、自分はそのときどうするんだろう。ソンナコトが起きないようにするには、どうしたらいいんだろう。アウシュビッツの古い写真、731部隊少年兵の証言… そして今のガザの惨状… どれも他人事じゃない気がする。

『PERFECT  DAYS』(監督・共同脚本:ヴィム・ヴェンダース 2023)

個人的には、一年の最後に観るのにふさわしい映画だったと思う。

https://muma-muma.hatenablog.com/entry/2df82e31777a8f1bed2900bd9a2f12cd


(15本)

 

 

【2023年のベストを選ぶと…】


2023年に観た映画は、全部で49本。最近としては多い方です。

個人的に「観られて本当によかった」というのは
(今、パッとアタマに浮かんだのを挙げると)

  『みかんの丘』
  『スープとイデオロギー
  『エンパイア・オブ・ライト』
  『バービー』
  『マイ・エレメント』


なので、以上5本を「わたしにとってのベスト5」ということに。

(順位なしです。明日選んだら変わりそう)



いや~宿題が終わってキャッホウ!です(^^)


のぞいて下さった方々に感謝します。


どうもありがとうございました。

 

 

2023年 映画館で観た外国映画

(ぐだぐだモタモタが続きます~)


『エンパイア・オブ・ライト』(監督・脚本:サム・メンデス 2022 イギリス=アメリカ)

この映画は好き!(個人的な思いを巡らすことができる空間と、風と、人と映画に対する愛情を感じた)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/57359354.html


ルイス・ウェイン  生涯愛した妻とネコ』(原案・共同脚本:サイモン・スティーブンソン 監督・共同脚本:ウィル・シャープ 2021 イギリス)

カンバーバッチはこういう役柄は得意なんだろな(楽しそうに演じてるな~)なんて思いながら、ルイスの苦労・不幸を観ていた(^^;
それにしても、19世紀末頃の上流(中流?)家庭の女子が、あまりに無能でお荷物にしかならないのにはゲンナリ(ま、わたしも似たようなもんだけど)。正直、ルイスが気の毒でならなかった。


『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(監督:アーロン・ホーバス マイケル・ジェレニック アニメーション制作:イルミネーション 任天堂? 2023 アメリカ=日本)

夜、家族4人で観にいった。(個人的には、トレーニング・シーンがすごいな~と) 帰路の車中では当然、若い人たちは(映画じゃなくて)ゲームの話で盛り上がった。高齢者2人はちょっと疲れた(^^;

『TAR  ター』(監督・脚本:トッド・フィールド 2022 アメリ

ケイト・ブランシェット(オーストラリア出身・俳優)がちゃんとその人に見えていながら、同時にドイツ語や英語で人を罵倒し、時には専門家?相手にぺダンティックな会話を延々と続ける、「リディア・ター」という名の天才ワンマン女性指揮者にしか見えない。とにかくタイヘンな映画だった… という記憶だけが残っている(^^;

『M3GAN  ミーガン』(監督:ジェラルド・ジョンストン 脚本:アケラ・クーパー 2023 アメリカ)

時間が合うのがこれだけ…という理由で観た映画。ホラーと聞いていたので、覚悟を決めて観始めたら、案外怖いシーンは少なくて助かった。
私は「人形は怖い」けど「ロボットは基本的に好き」な人。ミーガンはビミョーな立ち位置?だったけれど、あの一途さはけなげにも見えて、最後は妙にシミジミしてしまった。(続編が出来たら、観にいってしまいそう?)

『バービー』(監督・共同脚本:グレタ・ガーウィグ 2023 アメリカ) マテル社も製作にからむ?

バービー(人形)を作ったマテル社の、本格的に?製作に加わる(多分)、自分トコを笑いの材料にする、「売れればなんでもいいんだ」と社長役に言わせる……などなど、そのタフなユーモア感覚が面白かった(^^) 個人的にはバービーの活躍以上に、ケンのキャラ設定に感心。ライアン・ゴズリングを初めていい俳優さんだと思った。
それにしても、ラストはバービーの面接(就活)場面と思っていたので「なんなの、これ?」

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/57805164.html


『マイ・エレメント』(監督:ピーター・ソーン アニメ制作:ピクサー・アニメーション・スタジオ 2023 アメリカ) 同時上映短編は『カールじいさんのデート』

ピクサーのアニメーション制作のレベルの高さに圧倒された! 従来の少年少女の組み合わせを、意図的に逆にしているようで、火の玉少女は移民家庭出身、大人し気な少年は富裕層。しかも「火」と「水」が触れ合うことは、まず不可能という設定。それでも、脚本とこのアニメーション映像の力で、説得されちゃった自分(^^;(「火」と「水」だって仲良くなれる。どんなに困難そうに見えても、扉は開けられるんだよ。…そんな感じ)

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/57805164.html

ついでに『カールじいさんのデート』(監督:ボブ・ピーターソン 2023 ピクサー制作)

作り手は『カールじいさんの空飛ぶ家』でも共同監督だった人とか。カールじいさんも、あの頃から進化したんだ~(^^)(ピクサーの短編、大好きです!)


『名探偵ポアロヴェネチアの亡霊』(監督:ケネス・ブラナー 2023 アメリカ、)

前二作の方が好みかも。(今、ストーリーが思い出せないレベル(^^;)
でも物語の終わりに、俯瞰してヴェネチアを見られるシーンがあって、その明るさ、風の心地よさ(を感じた)は記憶に残っている。海に沈みつつあるような街、かつての都市国家、に思いを馳せたくなるラスト・シーンだった。


グランツーリスモ』(監督:ニール・ブロムカンプ 2023 アメリカ)

有名なレース・ゲーム(若い友人に見せてもらったことがあると思う)のタイトルがついている…とだけ思って、元気な時に気晴らしに観にいったら、「実話に基づく物語」というので驚いた。(「でもこういう映画っていいよね!」で家族と意気投合。気晴らしには最高でした(^^))


『オペレーション・フォーチュン』(監督・共同脚本:ガイ・リッチー 2023 イギリス=アメリカ)

カット帰りに、時間が合って観た映画。スパイ物の娯楽作品?みたいだし、キャストも好み(J・ステイサムはМI6御用達エージェント、ヒュー・グラントは悪役~)。というわけで、セリフのユーモアにくすくす笑って、楽しかった作品。


To Leslie トゥレスリー』(監督:マイケル・モリス 2022 アメリカ)

主演女優さん(アンドレア・ライズボロー)の顔は、これでアタマにインプットされたと思う(これまで何度か見かけた人だし) それ以外は、あまり思い出せないのが残念。
わたしにとっては、「予告編で見て、ごく自然に期待して、予想通りの展開でもメゲずに、自分と同類に見えてしまうレスリーの、応援をしながら観ていた」映画。(アカデミー賞にノミネートされたのが嬉しい。授賞式の彼女はもちろん「美しい」女優さんだった(^^))

『イノセンツ』(監督:エスキル・フォクト 2021 ノルウェーデンマークフィンランドスウェーデン

「こども」と「サイキックスリラー」って妙に合う?のは、映画が「オトナ目線で作られる」モノだから?

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/57995256.html


『CLOSE / クロース』(監督・共同脚本:ルーカス・ドン 2022 ベルギー=フランス=オランダ)

自分が「美少年」に興味がないせいか、不自然さが目につく?作品だった(^^;

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/57995256.html


ローマの休日』(4Kレストア版)(監督・製作:ウィリアム・ワイラー 脚本:ダルトン・トランボ 1953 アメリカ)

『クロース』を観た後、モヤモヤが残って後味が悪く、近くの小さな図書館で時間待ちまでして、同じ映画館で上映していたこの映画を観た。お蔭で?この『ローマの休日』が、いかに丁寧に脚本が練られた作品か、よくわかった(これもめぐり合わせ)
ただロマンチックなだけの映画でも無ければ、オードリーの美しさとローマの風物だけってのでもない。(そもそもオードリー・ヘップバーンの瞳には、時に「悲しみ」を秘めた聡明さが透けて見える。そういう人が演じている…という)
とにかく「観る人を楽しませる映画」という意味で、最良の部類の作品なんだと改めて思った。


『キャロル・オブ・ザ・ベル』(監督:オレシア・モルグレッツ=イサイェンコ 脚本:クセニア・ザスタフスカ 2021 ウクライナポーランド

わたしはこのウクライナ民謡を知らなかったけれど、「歌」の持つ力ってこういうモノなんだろう……と、最後はしみじみ思った。
39年1月のポーランドで、たまたま同じ家に住むことになったウクライナユダヤポーランドの家族(娘が一人ずつ)の、その後の運命。人の顔と立場の区別が、わたしには結構難しくて、見分けて話についていかなければ…と、もう一生懸命見ていたのを思い出す。 
脚本が緻密に練り上げられているのと、映像としての表現巧みさ。漠然と予想していた「家族の絆を描いた映画」とはずいぶん違った、考えさせられる作品だった。

さらば、わが愛 / 覇王別姫』(4K版)(監督・共同脚本:チェン・カイコ― 原作:リー・ピクワー 1993 中国・香港・台湾)

観にいったら絶対、暗い気持ちで帰ることになる… と自分でもわかっているのに、こういう映画が観たい時がある。良くも悪くも、この監督さんそのものみたいな映画だと思うし、チェン・カイコ―が好みに合うとも言い難いのに、それでも上映されると聞くと、心が動く…というか。「覇王別姫」という言葉の魔力…なんだろうか。



 

(16本)

2023年オフシアターで観た映画

今年はもうやめようかと思ったのですが、宿題が残ってるみたいで、なんとなく気が晴れなくて…  なので、いつも以上に「かる~い気持ち」で書き始めました。(記憶違いも結構ありそうで、ひろ~い心で読んでやって下さるとありがたいです)

 

『君を想い、バスに乗る』(監督:ギリーズ・マッキノン 2021 イギリス)

主演の俳優さん(ティモシー・スポール)が役柄より20歳以上若い(そもそも自分より若かった(^^;)と知って驚いたとか、彼のアメイジング・グレイスのアカペラ~とか、イギリスは縦断すると3つの国を通る(ま、そうですが)ので、バスの料金体制も変わるとか、細かいことばかり妙に覚えています。でも、この人がこれほどジェントルマン!な役柄なのを初めて見て、なんだか嬉しかったことも。


『メアリーの総て』(監督・共同脚本:ハイファ・アル=マンスール 2017 イギリス=ルクセンブルクアメリカ)

今思うと「創作」と「創作者」、あるいは「創造」「創造物」「造物主」といったことを、何重にも重ねた物語だったんだなあ…と。(個人的には、つき合う相手としてはチャランポラ~ンな男たちも、作家としては案外良心的だったのが良かったデス(^^))

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/57366087.html


『ボイリング・ポイント/ 沸騰』(監督・脚本・製作:フィリップ・バランティー二 2021 イギリス)

ロンドンの高級レストラン?のある一夜を「全編90分ワンショットで捉えた」というトンデモナイ作品。そうらしいと知った上で観たのだけれど、どうやってそれができたのか……とにかくスゴイ!と思った。(ただ、あの喧噪、あれほどの緊張感が裏側にあるのだとしたら、「高級レストラン」には近寄りたくないな~とも)


『ベルリン  天使の詩』(監督・共同脚本:ヴィム・ヴェンダース 1987 西ドイツ=フランス?)

最初にこの映画を観たのは「レンタル・ビデオ」で、だったかもしれない。それも結構早い時期だったのだと思う。時間が経ったとはいえ、そのときの記憶は本当にイ~加減だったのが、今回スクリーンで観てわかって、われながら驚いた(^^; 
「こんなにムズカシイ映画だとは思ってなかった」「なんだか硬い台詞劇観てるみたい」「もしかしたら、当時はピーター・フォーク(の魅力)にだまくらかされたのかも…」などなど、(自分に)呆れ気味に観ながら、それでも、あの天使たちが吹き抜けに腰かけてしゃべってる風景は、まさに「記憶のまま」で、自分がどういうものに惹かれる人間なのかを教えてくれてた?気もする。


『ファミリア』(監督:成島出 脚本:いながききよたか 2022)

この映画での役所広司は、わたしにはとても自然に見えて、これまでで一番好きな役柄…と思った(オーラの強い俳優さんで、過去それがジャマになる?気がするときもあったので) 
陶器職人としての力仕事・手作業というのは、演じる人から余計なモノを削ぎ落す方向に働くのかなあ…なんて(「嘘八百」シリーズの佐々木蔵之介さんでも思ったので) 


『小さき麦の花』(監督:リー・ルイジュン 2022 中国)

本国では思いがけないヒットになったと、後から聞いた。現代の、希薄なくせにせわしい、ときに世知辛い、人間関係や暮らしの中では失われてしまった、とても貴重なものを観ていると感じさせる映画。
ただわたしなどは、これが「まさにファンタジー」と感じるのも本当。だからこそ、ラストの悲惨さは辛かった。(ああいう終わり方しかないんだろうか…と)


アンネ・フランクと旅する日記』(監督・脚本:アリ・フォルマン 2021 ベルギー=フランス=ルクセンブルク=オランダ=イスラエル

ファンタジーの形を借りて、「アンネの日記」の本意とするところを、鮮やかに描いてみせたアニメーションだと思った(アンネが最も強く望んでいたのは、こういうことだったはず…と)


『とうもろこしの島』(監督・共同脚本:ギオルギ・オバシュビリ 2014 ジョージアチェコ=フランス=ドイツ=カザフスタンハンガリー

自然の力だけで十分恐ろしいのに、なんで人間は戦争なんてモノまでするんだろ…

https://muma-muma.hatenablog.com/entry/f5c5db989631ba4d6cddd0b7745b0173


☆『みかんの丘』(監督・脚本:ザザ・ウルシャゼ 2013 エストニアジョージア

エストニア語、ジョージア語、アブハジア語?が飛び交っても、いちばん相手問わずに通じるのはロシア語なのかなあ。でも、最初からロシア語使うと、「アブハジア側」(違うかも)と決めつけられちゃうんだし… などなど、どの言語も使えないわたしが考えても仕方ないけれど、観ている間、結構気になった(^^;

https://muma-muma.hatenablog.com/entry/14b7c9959170972b2fc47526f978b6b0


丸木位里丸木俊  沖縄戦の図 全14部』(監督・撮影:河邑厚徳 製作:佐喜眞道夫 2023)

沖縄戦の図」を佐喜眞美術館で直に見ることは、わたしには無理と思っていた。でもこのドキュメンタリー映画のお蔭で、「直に見た」ような気持にならせてもらった。
ご夫妻(二人の描き手)がどうやって一枚の作品を作り上げるのかも、いつか教えてもらえたら…と思っていた。この映画で、全く違う描き方をする画家二人の共同作業(というかなんというか)が垣間見られて、あの数々の絵の迫力の源泉が、戦争を体験された方たちのお話からだけではなく、それを「絵」として目に見える形にするまでの苦闘(としか言いようがない)にもあったことを、教えられたと思う。


『クローゼットに閉じこめられた僕の奇想天外な旅』(監督:ケン・スコット 2018 フランス=アメリカ=ベルギー=シンガポール=インド)

要するに「旅」の楽しさを描こうとした映画だったのかなあ。確かに、移動手段がクローゼット(別方向に出荷されちゃう)でも、気球や飛行機や船でも、「旅」のわくわくドキドキ感、何か新しいモノ、心躍るコトに出合えるかも…という気持ちには変わりがないのかも(^^;


『スープとイデオロギー』(監督・脚本・ナレーション:ヤン・ヨンヒ 2021 韓国=日本)

わたしはこれまで、この作り手の映画を観るたび、ご両親がなぜあれほどにまで「北」を信じ続けられるのか、自分には理解できない気がしていた。今回この映画で、お母様の「済州(チェジュ)4・3事件」の体験を知って、自分の知識のなさ、感覚の浅薄さをつくづく感じた。
チラシにあった監督の言葉「タイトルには、思想や価値観が違っても、一緒にご飯を食べよう、殺し合わずに共に生きようという思いを込めた」を見て、『みかんの丘』の焚火シーンが浮かんだ。人はそうやってなんとか生きる道を探してきたはず…と。
(よき伴侶に巡り合われた様子が、幸せそうで嬉しかった(^^))


『テス(4Kリマスター版)』(監督:ロマン・ポランスキー 原作:トマス・ハーディ「ダーバヴィル家のテス」 1979 フランス=イギリス)

昔、上映時に初めて観たときには、テスという女性の気持ちが、わたしはよくわからなかった。でも、それ以上に相手の男性たちの気持ちも理解し辛かった?ので、『テス』はただ「痛ましい」という記憶だけが残った映画になった。
今回は、テスの人物像がくっきりと頭の中で像を結び、自分との近さ?も感じて、昔のわたしは何を見ていたのだろうと思った。
貧富の差があまりに大きく、貧農は泥まみれでこき使われるしかないような時代。そこを(家族ぐるみで)抜け出すには限られた道しかなかった。
それでも、自分の中にある純粋な「何か」を求め続けた女性の姿として、テスは美しいと思った。ラストに流れるナレーションの「彼女は吊るされた(絞首刑)」という言葉は、昔以上に残酷に響いたけれど。(ナスターシャ・キンスキーの初々しさ、とまどったような表情も、一瞬の決断を下す思いつめた瞳も、今こうしていて浮かんでくるのが不思議)


『天国と地獄』(監督・共同脚本:黒澤明 原作:エド・マクベイン「キングの身代金」 1963)

わたしは黒澤作品の中で、昔この映画を一番面白いと思った記憶があって、4作品同時上映という機会に喜んで観にいった。マクベイン原作と知って、なんだか理由がわかった気がして(外国ミステリー大好き!)ちょっと可笑しかった。

『潜水艦クルスクの生存者たち』(監督:トマス・ヴィンターベア 脚本:ロバート・ロダット 2018 ルクセンブルク

2000年にロシアで「実際に起きた」原子力潜水艦事故の映画化というのが凄い。「海の男たちの強いきづな」も描かれるけれど、それよりロシア政府の「国民より国の威信の方が大事」という姿勢に、本気で腹が立った。(ウクライナ侵攻時にも、ロシアは自国兵士の犠牲に頓着していないように見えて、こういう体質は変わらないんだろうか…と。英国艦隊側が人命救助に奔走する姿があまりに対照的で、なんだか信じられない?くらいだった) 
映画はある種「予想通り」のラストを迎える。(なんだか日本も明日はわが身のような気がする) それでも、儀礼上の握手は拒み、父親の時計が取り戻せた少年の姿は、つらい映画の後味を少し良くしてくれたし、正に悪役のはずのロシア側を演じたマックス・フォン・シドーの「自然さ」にも感心した(^^;

『ウーマン・トーキング  私たちの選択』(監督:サラ・ポーリー 原作:ミリアム・トウズ 2022 アメリカ)

世界は広い。自分には想像もつかないほどの慣習・差別もあるんだと。

http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/58001359.html


『ウィ、シェフ!』(監督・共同脚本:ルイ・ジュリアン=プティ 2022 フランス)

移民大国で料理大国というフランスにはこういうシェフもいるという、「実話」の力を強く感じた。これまでに観たさまざまな「一流シェフ」映画の中で、わたしにとってはこれが最高!「天涯孤独で人づきあいが苦手」という主役の女性シェフが、どんどん魅力的になっていくのを見てるのも楽しかった(^^)


『ガザ  素顔の日常』(監督:ガリー・キーン  アンドリュー・マコーネル 2019 アイルランド=カナダ=ドイツ 原題:Gaza)

『ガザ」という場所を一度見てみたいと思い、前売り券を買ったのに… その後、「ガザの素顔の日常」は、とんでもないモノになってしまった。「今頃そんなの見ても…」と言われたりしたけれど、それでも行って「かつてのガザ」を垣間見ただけでも、自分にとっては意味があった(と思いたい)。 
人がとても多い。そのせいか、どこを見ても狭苦しく感じてしまう。でも、将来に希望が見いだせなくて、悩んでいる若い人たちは、日本にもたくさんいる…… そんな風に感じながら観るはずだった映像が、今ニュースを見ながらふと浮かぶとき、アタマの中がグチャグチャになる。ガザの人たちは、ほんとうにどうなってしまうんだろう。

 

 

(18本)